支援のセンス湧くラボ:服薬管理のお話
自閉症に関連した専門資格を取得する際に、働きながら学んだ大学で、医療の単位も取りました。自閉症とてんかん発作やそのお薬に関して、専門的に学べる場は少ないそうで、とても貴重な学びの時間となりました。
障害者福祉施設では、何らかの服薬をされている利用者さんが多いですね。
施設は、どの様に服薬管理をしていますか。
「うちには看護師がいるから」。えっ?任せきり???
服薬や体調管理は看護師に任せきりで他の支援員はノータッチ、 どんな薬をどう飲んでいるか知りません?それで本当にいいのでしょうか? 医師も看護師も医療系の国家資格ではあるけれど、得意分野は人それぞれです。精神科系に詳しい医療関係者もいれば、そうでない人もいます。新しく来た看護師さんより知的障害児者と永く関わってきた支援員や介護福祉士のほうがてんかんについての専門的知識を持っていた、といった現場も実際にありました。資格が全てではありません。服薬管理に関して言えば、私はスタッフ全員が知識・情報を共有する必要があると考えます。例えば、実際はその看護師が休む日もありますよね。緊急時の他の利用者の対応をしていて、今日は昼食後の服薬管理ができないや、ということだってありうるのです。
飲んでいる薬が与える作用・副作用も知識として頭の片隅に入れておくのといないのでは支援に違いは出ないでしょうか?
「安全に管理👌」すること
当たり前のことだけどできていなかったりしていませんか?
利用者さんの服薬について、
☓ 記憶が頼り という現場がありました。
◎ 誰が見てもわかるように管理 することが事故を防ぐために必要です。
どんな情報が必要?
利用者名
薬の名前と何の薬か
いつ どのタイミングで
何錠 飲むか
毎度Wチェックで。
スタッフが事故を防ぐためにできるシンプルなことです。でも、Wチェックしている現場はどのくらいあるかな?飲み間違い・飲み忘れで発作などの事故が起きてからでは遅いのです。人間は、間違えるものだから。大事なことは、Wチェック。
必要十分な量の水で飲んでいるか も見ましょう。
錠剤が喉に引っかかったり途中でつかえて粘膜を痛めたりしないように、それから効果的にお薬が作用するために。
「医者じゃないんだから」何も言っちゃいけない???
てんかんのお薬、安定剤、眠剤など毎日大量に服薬されているAさんがいました。Aさんは年に1〜2回、突然精神不安定になることがあって、昨日まで親しくおしゃべりしていた相手をある日突然「◯◯◯◯。▲▲▲▲。こういうところが嫌だ」と急に批判し避け出す。 相手は同じ場合もあるが、別の人物がターゲットになることもある。それまで、支援員がターゲットとなった時は、支援員には落ち度が無い時でも、Aさんに「ごめんね」と謝るという “間違った対応” をどの支援員もとってきた。
その対応はなぜ間違っているのか?
謝ってその支援員とは関係が戻っても、その後もターゲットを変えて同様の急変を何度も繰り返している(その方法では効果が無い、ということ)。
「支援員は悪くないのに謝って収束」というやり方は、Aさんに施設スタッフがコントロールされている状態だ、ということを施設側がわかっていない。
施設によっては、本来は指導の現場でありながら専門性を持ったスタッフがほとんどおらず、利用者家族から乗り込まれてクレームになるのを恐れ、ひたすらお客様としての対応に終始するところも多い。Aさんのケースも同様でした。
ある時、私は、Aさんが主治医から処方された薬を指示通りのタイミングで飲んでいないことに気付きました。それとなく声を掛けます。すると「看護師でもないのに」とクレームをつけ、避け出しました。ターゲットを変えてきた瞬間です。
以前からAさんが精神系のお薬を大量に飲んでいるにも関わらず、毎晩の様に晩酌をしていることを気に掛けていました。お酒は嗜好品であるから、医者ももしかしたら呑むなとは言わないかもしれない。でもあれだけの服薬量だからその呑み方には一言あるはずだ。
私は他の利用者の支援同様に分析を始めました。私は、と書いたのは、その施設には共に「まず分析」しようとするスタッフが皆無だったからでした。Aさんは、どんな時に急変するか?「あ、今回急変したのは宿泊直後だ」。2泊3日の泊まりの訓練を終えて、さようならと見送るまでは笑顔で親しく話ができていた。その後からだ。何があったか?
そこで気付くのです。Aさんは他の誰よりも、スタッフよりもたくさんの日本酒をお土産として買って帰ったこと。自分では持ち運ぶのにも一苦労なくらいの量。処方されている大量の精神系のお薬と、大量の日本酒。共依存関係の母と3日振りに会って、、、。このことと年に1〜2回繰り返される、原因がよくわからない精神の急変って、関係あるのでは、、、。
Aさんとご家族、上司は言いました。
「医者でもないのに」
「その主治医に、Aさんが毎晩の様に晩酌していることは伝わっていますか?それが問題なんです。」
その後、主治医にアルコールのことを話していないから伝わっていない、ということがわかりました。話していないということは、隠していたわけです。隠していたということは、後ろめたい気持ちがあったということでしょう。
上司は介入の技術を持っておらず、Aさんに「その職員と話をしたくないならしなくていい」と間違った対応を続けたため、Aさんは大勢の施設スタッフや利用者の前で長期に渡りターゲットを無視し続けることになってしまいました。
「こんなにこじらせたのは君が初めてだ」この言葉は、このケースを解決・改善するのに役立ったでしょうか。当事者の誰も幸せにしていません。こじらせたのは「そのスタッフと話をしなくてもいい」と言ってコミュニケーションを断ち切るだけという事態を悪化させる間違った方法を上司がとったからでした。目立つところに円形脱毛ができ、治るまでにはその施設を後にしてから、かなり日にちがかかりました(スーパーバイザーが居ない福祉施設で苦しい思いを経験した職員さんは日本中にたくさんいることだと思います)。
「Aさんはこれからも繰り返すのか。適切な支援で改善できるのに」
気掛かりなのは、適切な支援を受けられないためにより良い人間関係を築けないまま過ちを繰り返し歳を重ねていくAさんと、新たにターゲットにされるであろうスタッフのことです。
このような人間関係に支障をきたす方のケースでも、解決・改善する方法はあります。(?_?)ヒント:①このケースで解決・改善するために動くのは上司です。②恋愛テクニックを応用します。健全な方法ですよ!ナニソレ?ワカッタアナタハセンスガアリマス。
副作用との兼ね合いを見る
医者でもないのに、と暴言を吐かれましたが、必要なことなので書きますよ^^;
お薬は、副作用との兼ね合いです。施設スタッフ、支援員はその点に気を付けながら利用者さんの様子を見て、ご家族に伝える必要があります。
知的障害児者の場合、ご本人はそのお薬を飲んでどんな感じがするのか、いいこと・困ることを正確に伝えられないケースは多いからです。
ご家族は、朝と夜と休日は利用者さんの様子を見ることができます。朝の目覚めの様子、夜の寝付きの様子については施設スタッフよりご家族のほうが詳しくご存知でしょう。
平日の日中、この長時間の様子は支援員が見ているのです。別の言い方をすれば、平日の日中の様子は、本人以外だと支援員しか言えないのです。
副作用との兼ね合い、とは具体的にどういうことか?
その副作用はその方の日常生活に支障をきたすレベルかどうか?ってことです。
例えば、日中過ごす場が作業所の類いであれば、「作業するにはちょっとつらそうな眠気レベル」なのか、「多少眠そうだけどなんとか作業はミス無く仕上げられるレベル」なのか。便が固くなったけど「食事や水分の摂り方の工夫でコントロールし、腹痛も無く活動できるレベル」なのか、「これまでと比べネガティブになりがち。おなかも張って痛そうにしておなかをさすってる。笑顔では活動できていないレベル」なのか。先に挙げたケースのように「原因不明で急変し被害妄想等が出て人間関係に支障をきたすことを繰り返している」も、精神のお薬を処方されている方の場合は、お医者様に何らかの方法で伝わっていて欲しい情報でしょう(血液検査の結果は身体の情報だけです。人は、人との関わりの中で生きていくわけですから精神・情緒の面もおろそかにはできないのです)。本人や家族はアルコールのことだけでなく人間関係に支障をきたしていることも、後ろめたくて大事な情報でありながら伝えていないこともあります。医者にかかっているのだからそれで問題ない・任せておけばいい、ではないのだと考えます。そんなの、プロの支援員としてはおさぼりではないですか。
面倒なことには手を出さない上司・支援技術が未熟な上司は「家族が隠してるのに施設から言えないだろ」と自分の勉強不足を棚に上げて逃げるかもしれません。いやいや、お医者さんへの伝え方もいろんな方法がありますよ。(?_?)ヒント:施設が主治医に直接言わなくても、家族や本人が自ら話す方法を考えてみてください。要は言い方です。ワカッタカナ?ワカッタアナタハセンスガアリマス。
その方法を続けて改善が見られない・同じ過ちを繰り返すなら、その方法は効果がないということ。
良い方法はそんなに長期間「様子を見ましょう」の必要はなく、わりと早くに結果が出ます。
支援はセンス。(^_-)-☆